平成22年年頭ご挨拶
社団法人 全日本トラック協会 会長
中西 英一郎
全国の会員事業者の皆様はじめ関係各位には、平素から格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。平成22年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は、内外にわたって経済や政治情勢が大きく変化し、まさに「激動の年」となりました。一昨年秋に発生した世界的金融危機からの早期脱却が期待された世界経済は、前半の一層急速な後退、深刻化を経て、後半はアジアの回復を中心に、底打ち、持ち直しの動きも指摘される展開となりましたが、雇用や需要不足の問題を含め、総じて未曾有の厳しい情勢が続きました。我が国経済も、同様の推移を辿りましたが、年末にかけての円高、デフレ傾向の強まりなど、厳しい年越しとなりました。
一方、政治の分野では、「チェンジ」をスローガンとした米国オバマ政権の誕生が世界を賑わせましたが、我が国でも真夏の総選挙を通じて、民主党を中心とした新政権が誕生し、文字どおりの「政権交代」が行われるに至りました。
新年は、こうした大きな変化の中から、世界規模の経済回復をはじめ、新たな安定、発展への道筋が明確に描かれる年となることが強く期待されるところであります。
一方、高速道路料金につきましては、国土交通省が昨年4月に打ち出した上限料金制の導入等による新たな料金割引制度は、多くのトラック事業者にとって実質的に値上げとなるため、トラック議連の全面的なご支援もいただきながら、業界を挙げて強力に反対運動を展開いたしました。この結果、改定案は凍結されたのち、昨年末に新たな料金案が示され、トラックについては少なくとも現行の時間帯割引や大口多頻度割引が継続されることが確実な見通しとなりました。
こうした状況の中、トラック運送業界においても、荷動きの極端な落ち込みをはじめとして、これまで経験したことのない、極めて苦しい一年を過ごしました。これは、昨年、規制緩和後はじめて事業者数が減少に転じ、車両数も大きく減少したことなどにも、明確に表れています。こうした当面の危機突破に向けた業界要望を受け、高速料金の昼間一律3割引きの導入や、中小トラック事業者に対する累計150億円の緊急助成、資金繰り対策のための金融支援などの国としての新たな諸対策も相次いで打ち出され、実施されました。また、国土交通省においては、規制緩和後20年を経たトラック産業の現状をあらためてレビューし、規制を含めて、その将来のあり方を検討する方針を明らかにされたところで、本年はその具体的着手が期待されるところであります。
また、22年度の税制については、焦点となっていた自動車関係諸税の暫定税率廃止は、深刻な税収不足、財政危機の中で、重量税の一部軽減を除き、残念ながら実質見送りとなりました。同時に、 強く反対した地球温暖化対策税(環境税)の導入も見送られることとなりましたが、これについては「23年度の実施に向けて成案を得るべく更に検討」との方針も明らかにされております。中小企業投資促進税制や業界の公益的事業の財政基盤である運輸事業振興助成交付金は、その重要な意義が認められ、従来通り継続されることとなりました。今回の税制要望は、新政権の全く新たな仕組みの中、手探りで進めた面もありましたが、全国各協会の皆様と文字通り心も力もあわせて、強力な要望活動が展開できましたことこそ、今後の対応に向けて、業界として最大の成果ではなかったかと考えており、あらためて皆様の格別のご協力に対し、心より御礼申し上げる次第です。
業界としての新年の最大の関心事は何と言っても経済、景気の本格回復であり、国の力強い対策実施を引き続き強く要望し、当面の危機を乗り越えていかねばなりません。同時に、こうした状況の中にあっても、安全、環境、法令順守、労働力確保など、将来にわたるトラック運送事業の発展を目指して、着実に取り組まなければならない課題は、引き続き山積しております。全日本トラック協会としましては、今後とも業界の叡智と力を結集して、諸課題に全力で取り組んでまいりますので、関係各位の一層のご支援、ご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたしますとともに、本年の皆々様のご健康、ご多幸を心よりお祈りして新年のご挨拶といたします。