平成25年星野良三全ト協会長年頭所感
公益社団法人 全日本トラック協会
会長 星野 良三
全国の会員事業者の皆様をはじめ関係各位には、平素から格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
平成25年を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
全日本トラック協会は、昨年4月に公益社団法人として新たなスタートを切りました。これは、全日本トラック協会が、公共性の高いトラック輸送産業の健全な発展と公共福祉への寄与などを事業の目的としていることや、安全、環境をはじめとした事業運営が認められたものと自負しております。今後も公益社団法人としての社会的使命を果たすべく、安定的な輸送力の確保と安全・安心で質の高い輸送サービスの提供に努め、積極的に事業を展開してまいる所存であります。
また、9月には、東日本大震災時にトラックが機動力をいかんなく発揮し、大量の緊急支援物資を被災地に輸送したことにより、地域住民の生活安定に多大な貢献をしたとして、「平成24年度防災功労者内閣総理大臣賞」をいただきました。さらに、全ト協及び全国のトラック協会の震災への取組が、IRU(国際道路輸送連盟)の最高位とされる「IRUグランプリ賞」に選定されました。これは、我々トラック運送業界が政府、国民はもとより、IRU加盟の世界各国からも高い評価を得た証しであり、大いに誇りとすべきものであります。
11月には、大規模災害を見据え、「全日本トラック総合会館(全日本トラック防災・研修センター)」の建設に着手しました。同会館は、地下1階、地上11階建てで各種研修室に加え、免震構造で非常用発電装置なども備えております。平成26年3月に竣工し、有事の際には全国の緊急物資輸送の中央司令塔としての機能を担ってまいります。
さて、我が国の経済を振り返りますと、東日本大震災の復興需要による公共投資、エコカー補助による自動車販売の回復など内需による下支えが期待されましたが、円高や欧州金融危機問題、更には中国経済の減速に加えて、領土問題による韓国、中国との摩擦により貿易も落ち込み、夏以降低迷を余儀なくされました。また、輸送需要も低迷を続け、運賃が低下する一方で燃料価格の高止まりや軽油引取税等の過重な負担がのし掛かり、中小企業が99%を占めるトラック運送業界では、多くの事業者が事業存廃の岐路に立たされています。
このような中、物流の基幹産業でありますトラック運送事業の社会的な使命を果たすため、具体的には規制の再評価と必要な見直しの促進、ドライブレコーダの普及拡大を図るとともに、原価意識向上のためのセミナーの開催及び事故防止、環境対策、少子高齢化に対応した労働力の確保並びに有事に備えた緊急輸送体制の確立を図るなど、時代の要請とも言うべき諸課題に果敢に取り組んでまいりました。
特にコスト負担増となった軽油価格高騰に対しては、5月に開催した「燃料価格高騰による経営危機突破全国統一行動」で、全国のトラック協会等が一丸となり、2万人規模で総決起大会、請願活動、街頭行進等の実施により、政府、国民に業界の窮状を広く訴えたところです。この結果、国土交通省では燃料サーチャージ制の導入促進のため、日本経済団体連合会および日本商工会議所をはじめ地方の荷主団体に対して協力要請を行っていただく一方、「トラック運送業における燃料サーチャージ制緊急ガイドライン」の改訂と、導入促進のセミナーをトラック協会との共催により、全国各地で開催していただきました。
「安全」対策については、常に最重要課題として位置付け、各種施策を強力に推進しています。昨年は、事業用トラックが第一当事者となる死亡事故件数が一昨年を上回ったため、「平成24年・下期事故防止緊急特別対策」を実施し、トラック追突事故防止マニュアルを活用したセミナーの開催や、デジタルタコグラフ、ドライブレコーダ等安全対策機器の普及促進に努めたほか、新たに「WEB版ヒヤリハット集」を制作し、ホームページに公開するなど緊急対策に取り組んでいます。
貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)については、制度導入10年目となる昨年末現在で認定事業所数は、1万8,119事業所に達し、安全性に優れた事業所として、荷主企業等から高い信頼を得ています。今後は、認定2万事業所を目指し、業界内に対しては申請事業所数の増加、また、対外的にはGマークの認知度アップのための方策を推進するなど、Gマーク制度によりトラック運送業界全体の安全性の底上げを図ってまいります。
また、労働災害については、7割が荷役作業時に発生し、特に自社以外の構内作業中に多発しているため、荷主等に対する協力を求めるなど対策を実施しています。近年の少子高齢化社会の進行や、免許制度改正の影響もあり、若年労働者の確保が困難になりつつあるなど、労働環境改善も喫緊の課題です。
さて、トラック輸送産業の市場規模は約11兆円を超え、「生活(くらし)と経済のライフライン」として、産業活動や国民生活に不可欠な存在となっており、これからも社会との共生を図りながら、持続的発展を目指す必要があります。
このため、全日本トラック協会といたしましても、6万3000事業者の叡智と総力を結集して諸課題の解決に全力で取り組んでまいりますので、関係各位、皆様の倍旧のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。本年も会員事業者のご繁栄と、皆様のご健勝、ご多幸を心よりお祈りし、平成25年の年頭にあたり私の挨拶といたします。
平成25年 元旦